私たちの技Craftmanship

技術とセンスと心意気
どんなときもベストの衣裳を提供してみせる。
衣裳職人の誇りが表現世界を支えます。
表舞台を楽しむ側から裏方へ回るとそこは別世界、衣裳の仕事は地道な作業の連続です。技術と知識は常に勉強、体力的にもハード。きついのは確かですが、作品ごとに発見があり飽きない面白さがあります。最も適した衣裳をとことん考え最善を尽くす。それが私たちの矜持です。
フレキシブルな対応力
私たちの仕事は、どんなにスケジュールがタイトでも、期間までに間に合わせるのが絶対的使命です。脚本を読みこみ演出を理解し、監督や役者の好みもできる限り把握。その上で、倉庫の衣裳はどうか、外部で探すか、製作部で作るか…フル回転で考え準備にとりかかります。
在庫探しにアイロン掛け、洋服のタイアップ依頼etc。すべて有名ブランド服で揃えるわけではなく、見せ所とバランス、を考えながら用意します。在庫にないときは古着屋を回って探します。衣裳探しにどういうルートを持っているかも、私たちの重要なスキルです。
衣裳合わせは、最もナーバスになる時間。最初の打ち合わせとはまったく違う指示に変わったり、新たな要望が出たり。どんなときも冷静に対応し提案します。
その極意を料理にたとえると――打ち合わせで、”和食が食べたい”と言われても、必ず洋食も中華もイタリアンも用意しておくこと。それくらいの心構えで臨んでいれば、慌てず焦らず対処できます。
リアリティが衣裳の命
テレビドラマの現代劇では、人気役者が着ている洋服がよく評判になります。流行にアンテナをはり、時代の移り変わりを観察することが欠かせません。たとえば昔はラーメン店の店員といえば白衣。今はTシャツにバンダナもありで、それが現代劇に求められるリアルです。正解が決まっておらず、私たちの知識とセンスが衣裳を左右する。責任重大で、そこがまた面白いところです。
私たちは時代を聞けばすぐに、歴史背景を思い浮かべ衣裳のイメージを膨らませることができます。きらびやかな衣裳よりも、実は汚く破れたものの方が難しい。綺麗な衣裳は、いくらでも本物に近く作れます。けれど汚しは、タワシやヤスリでこすったり粉を着け洗ったりなど、さらに手間とテクニックがいるのです。各自が研究した技を持ち、それがリアリティの決め手。戦国時代の着物などは当時の柄を再現するために一から製作します。破けやすいリネンを二重にして使い、それに汚しの作業を施すのです。
どんな端役の衣裳にも気が抜けません。本物に見せる工夫をとことんやり抜く覚悟。それが衣裳職人としてのプライドです。
進化し変化する衣裳製作
社内には製作部があり、現場からの発注を受けて様々な衣裳を製作します。
テレビ性能の向上や画面拡大により、衣裳はよりリアルさが求められるようになりました。昔は時代劇の群集の着物は、大量に作るためミシンがけ。けれど今は、それだとミシン目がわかってしまうので手縫い仕上げです。
複数枚まったく同じものを用意することもあります。たとえば同じ衣裳で旅を続ける話だと、衣裳がだんだん汚れていくはず。けれども撮影が順取りとは限らないので、現場からの連絡を受け、撮影スケジュールに合わせて必要な枚数を製作するのです。
時代と共に、製作面から技術革新を実感することがあります。たとえば伸びる布地は格段によく伸びるようになりました。激しい動きに対応でき、役者やダンサーのパフォーマンス力を向上させています。
最近製作で増えたのは、漫画やゲーム原作の衣裳。2次元世界の人物造形と3次元の本物の人間では、スタイルが決定的に異なるのでかなり難しい。デザイン画のイメージに近づけられるよう、技を駆使し試行錯誤して完成させます。
皆の思いがドラマを熱くする
以前はスタジオ撮影が中心でしたが最近はロケが急増。真冬のロケでは、ヒートテックの上下にホカロンを貼り見えない衣裳も用意します。カット!の声がかかったら、役者のもとへベンチコートを持参するのも私たち。こうした積み重ねが役者との信頼関係を育みます。
一番うれしいのは、自分が選んだ衣裳を気に入ってもらえたとき。「この衣裳で役に入り込めた」という声は、職人冥利につきます。役者の演技がのってくると現場の雰囲気も盛り上がり、一体感が増してきてとてもいい空気になるのです。
楽しみのひとつはロケで全国各地へ行けること。海外ロケでは、タイの山岳地帯を訪れたり、韓国で現地スタッフと一緒に仕事をしたり。センスの違いから、海外スタッフと激しく議論したこともいい経験でした。
現場では監督はじめ各分野のプロが集結し、ときに荒っぽい言葉が飛び交います。それは出来る限りいいものを創りたい!という強い思いがあるから。誰もが人に感動を与えるために自分に何ができるか考え、貪欲に仕事に取り組んでいます。
この仕事は飽きる、ということはまったくありません。すごく大変だけれどやっぱり面白い。作品が変わればそのたびごとに、裏方の私たちにも熱いドラマがあるのです。